『東京奇譚集』 「どこであれそれが見つかりそうな場所で」
- 作者: 村上春樹
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2005/09/15
- メディア: 単行本
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起きてカーテンを開けたら、雨が横殴りに降っていた。
せっかくの休日、洗濯物をしようと思っていたのに、これでは気持ちよく乾きそうにない。
洗濯物をあきらめ、パソコンを開くも、パソコンにも振られてしまった。
「どこであれそれが見つかりそうな場所で」
マンションの住人が突如として消えうせ、二十日後、遠く仙台で二十日分の記憶をなくして発見される、という話。
これまた、話としては何となく聞いたことあるようなないような。
でも、そんな不思議な話に時々出てくるものすごく現実的な会話や設定。
いなくなった男は"メリルリンチ"に勤める証券マン。
「アルマーニの金属縁の眼鏡をかけて、証券トレーダーをやっていて、いつも階段を使って上り下りしている人です。身長は173センチ。年齢は40歳。」
この男が、"これから部屋に戻る"という電話をかけた後、お金も何も持たずに突如としていなくなる。
"私"は、この男の捜索を依頼される。
"私"が、その男がいなくなった場所である階段を捜査中、そこで出会った女の子とする、"好きなドーナッツは?"という会話。
「ねえ、おじさん、ミスター・ドーナッツの中で何が一番好き?」
「オールド・ファッション」と私は即座に答えた。
「それって知らない」と女の子は言った。「変な名前。私の好きなのはね、『ほかほかフルムーン』、それから『うさぎホイップ』」
やんわりしているけれど、とても現実的な話だと思う。
その一方で、話全体を包む不思議な空気感。
一つ一つちゃんと考えれば分かるけれど、話の流れの中ですんなりと、でも少しだけ複雑に絡む現実的な、非現実的な要素が短編の内容を色濃くしている。
・・・さすがハルキ殿。
そういえば、大学の時のゼミの教授(エドガー・アラン・ポーに似ていたので、あだ名が"ポー"だった)も村上春樹殿の大ファンだった。
授業中、その当時発行されたばかりの「海辺のカフカ」について、講義内容を完全に脱線して熱く語っていたのが懐かしい。
彼は元気かしら・・・。
やっぱり『東京奇譚集』を読んで講義そっちのけで熱く語っているんだろうか。
今度大学に学食でも食べに行こうと思う。